もし、よろしければ英語を声に出し繰り返してみて下さい。
December 9, 2025.
2025年12月9日。
Today, I’d like to tell you a story that will make you say, “I never knew such a day existed!”
今日は、「こんな日があるなんて知らなかった!」と思わずにはいられないお話をしたいと思います。
First, imagine this.
まずは想像してみてください。
“Dried fish is soaked in an alkaline solution, then soaked in water for several days to rehydr ate.”
「干し魚をアルカリ溶液に浸し、その後数日間水に浸して水分を補給する」。
There’s a dish that takes an incredibly long time to make.
そんな、とてつもなく時間のかかる料理があります。
Lutefisk is a Christmas staple in Sweden and Finland.
ルーテフィスクは、スウェーデンとフィンランドのクリスマスの定番です。
Traditionally, preparation begins on December 9th, Anna’s Day.
伝統的に準備が始まるのは、12月9日、「アンナの日」です。
In the old days, dried white fish was soaked in an alkaline solution made from a mixture of ash and lime, and the water was changed daily to slowly rehydrate it.
昔は、干した白身魚を灰と石灰を混ぜたアルカリ溶液に浸し、毎日水を交換しながらゆっくりと水分を補給していました。
This was the “time limit” to finish it in time for Christmas Eve dinner.
これが、クリスマス・イブの夕食に間に合うように仕上げるための「タイムリミット」だったわけです。
You might be thinking, “Huh? It’s really that hard,” but in Scandinavia, this is a winter tradition.
「え?そんなに大変なの?」と思われるかもしれませんが、北欧では、これが冬の伝統なのです。
The taste varies from household to household, but in Scandinavia it is beloved as a “long-awaited traditional taste.”
家庭によって味は様々ですが、北欧では「待ち遠しい伝統の味」として親しまれています。
Every country has its own stories connected to its food culture.
各国には、それぞれの食文化にまつわる物語があります。
Anna’s Day can be said to be “a day filled with wisdom for welcoming the season.”
アンナの日は「季節を迎えるための知恵が詰まった日」とも言えます。
In Japan, it’s the season when winter vegetables become sweet.
さて、日本では冬野菜が甘くなる季節。
How about some turnip miso soup this morning?
今朝はカブの味噌汁はいかがですか?
It’s sure to warm you up.
身体がじんわり温まりますよ。
1. アンナの日 (Annadagen) とは?
- 日付: 毎年 12月9日。
- 起源: キリスト教の聖人暦に由来し、イエス・キリストの祖母とされる聖アンナに捧げられた日です。しかし、北欧の暦、特にスウェーデンやフィンランドでは、中世以降、季節の節目を示す重要な日として定着しました。
- 伝統的な役割:
- クリスマスの準備開始: クリスマスシーズンの本格的な始まりを示す日の一つです。
- ルーテフィスクの準備: この日に、クリスマスの食卓に欠かせないルーテフィスクの仕込みを始めると、クリスマスイブ(12月24日)に間に合うとされていました。
- 醸造の確認: 伝統的に、この日はクリスマスビールなどの醸造が上手くいっているかを確認する日でもありました。
- 天気・予言: 農村部では、アンナの日の天気がその後の冬の天候を予言するとも言われていました。
ルーテフィスク (Lutfisk) の詳細
- 名前の由来:
- スウェーデン語で「lut (アルカリ溶液)」と「fisk (魚)」を合わせた言葉で、「アルカリ処理した魚」という意味です。
- 調理法:
- 乾燥工程: まず、タラなどの白身魚を風で完全に乾燥させます(干し魚)。
- アルカリ処理(「灰と石灰」の工程): この干し魚を、かつてはカバノキの灰や消石灰を水に溶かしたアルカリ溶液に数日間浸します。この処理によって、魚の身が膨張し、独特なゼリー状の食感に変わります。
- 水戻し: その後、アルカリ分を取り除くため、数日間、毎日水を交換しながら真水に浸し、時間をかけて戻します。
- 加熱: 最終的に、加熱調理(茹でる、オーブンで焼くなど)して食べます。
- 食文化:
- 食べる時期: スウェーデン、フィンランド(lipeäkalaと呼ぶ)、ノルウェー(lutefiskと呼ぶ)で、主にクリスマスの時期に食べられる伝統料理です。
- 味と食感: 非常に繊細で柔らかいゼラチン質の食感と、淡白な味わいが特徴です。
- 食べ方: typically、ベシャメルソース(ホワイトソース)、マスタード、揚げたベーコン、ジャガイモ、エンドウ豆のピューレなどと一緒に提供されます。
「干し魚料理ルイユフィスク準備の理由」への補足
「ルイユフィスク」は、その準備がアンナの日に始まる最大の理由は、調理にかかる時間です。
準備の理由(タイムリミット):
魚をアルカリ溶液に浸し、そこからさらに数日間かけて真水に浸し直す工程は、魚を安全に食べられる状態に戻すために欠かせず、全体で非常に時間がかかります。12月9日に準備を始めれば、多くの家庭がクリスマス・イブのディナーに間に合わせることができたため、この日が伝統的な「仕込み開始日」として定着したわけです。
この伝統は、冷蔵技術がなかった時代に、食料(魚)を保存し、寒い冬の貴重な栄養源とするための「季節の知恵」が詰まった文化遺産と言えます。
ちなみに、日本で「カブの味噌汁」が冬に美味しいのは、寒さでカブの細胞内に糖分を蓄えるため、甘みが増すからです。北欧の冬の伝統と、日本の冬の食卓にも、季節を楽しむ知恵が息づいています。
🐟 ルーテフィスクに使用される魚
ルーテフィスクの起源は、保存のために乾燥させた魚(干し魚)を利用することにあります。
1. 主に使用される魚種
主に以下の白身魚が使用されます。
| 魚種 (日本語名) | スウェーデン語/ノルウェー語 | 特徴 |
| タラ | Torsk (トルスク) | 最も一般的で伝統的な魚。身が厚く、アルカリ処理後にしっかりとしたゼラチン質の食感になる。 |
| オヒョウ | Hälleflundra (ヘッレフルンドラ) | より高級な選択肢。風味豊かで、タラよりも身が崩れにくい。 |
| メルルーサ (ヘイク) | Lysekam / Kulleröa | 地域によっては使用されることがある。 |
2. 乾燥方法
これらの魚は、寒冷な気候を利用して屋外で完全に乾燥させた「ストックフィッシュ (stockfish)」または「クリップフィスク (klippfisk)」として保存されます。
- ストックフィッシュ (Stockfish): ノルウェー北部のロフォーテン諸島などで作られる、塩漬けせずに空気で乾燥させた干し魚。
- クリップフィスク (Klippfisk): 塩漬けにした後で乾燥させた魚(塩タラなど)。
ルーテフィスクの調理法は、この硬く乾燥した魚をアルカリ溶液と真水で時間をかけて戻すという点で、独特の進化を遂げてきました。
🍽️ 北ヨーロッパの代表的なクリスマス料理
ルーテフィスク以外にも、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、デンマークでは、クリスマス(ユール、Jul)を祝うための多様な伝統料理があります。
🇸🇪 スウェーデン (Julbord)
「ユールボード(クリスマスの食卓)」と呼ばれるビュッフェ形式の豪華な食事を用意します。
- ユールハンム (Julskinka): クリスマスハム。塩漬けにし、パン粉とマスタードを塗って焼き上げたもの。クリスマスの主役の一つ。
- ヤンソン氏の誘惑 (Janssons Frestelse): ジャガイモ、タマネギ、アンチョビをクリームと一緒にオーブンで焼き上げたグラタン。
- ミートボール (Köttbullar): 日本でもおなじみのスウェーデン風ミートボールも欠かせません。
- ニシンのマリネ (Sill): 様々な味付けで提供されます。
- リッスグリョート (Risgrynsgröt): 牛乳で煮たお米のポリッジ(お粥)。アーモンドを一粒入れて、当たった人に幸運が訪れるという伝統があります。
🇳🇴 ノルウェー (Julemiddag)
地域によって、肉料理と魚料理の伝統が分かれます。
- リベ (Ribbe): 豚のスペアリブ。皮をカリカリに焼いたものが人気(東部)。
- ピンネショット (Pinnekjøtt): 塩漬けにして乾燥させた子羊のスペアリブを蒸した料理(西部)。
- ルーテフィスク (Lutefisk): ノルウェーでも重要なクリスマス料理です。
🇩🇰 デンマーク (Julefrokost)
- フレスケスタイ (Flæskesteg): 豚肉の皮をパリパリに焼いたローストポーク。
- ライス・ア・ラ・マンド (Risalamande): アーモンドとバニラ風味の冷たいライスプディングにチェリーソースをかけたデザート。これもアーモンドを探す遊び(マンデルガヴェン)があります。
これらの料理から、北欧のクリスマスが、保存食の知恵(ルーテフィスク、ハム、マリネ)と、寒い冬を乗り切るための温かいごちそう(グラタン、ロースト)で構成されていることがわかります。
🍹 北欧のクリスマスの飲み物
北欧のクリスマスでは、体を温める温かい飲み物と、伝統的なアルコール飲料が楽しまれます。
1. グロッグ (Glögg)
- 概要: スウェーデン、フィンランド、ノルウェーなどで広く親しまれている、ホットワインの一種です。日本の甘酒のように、クリスマスの時期になると家々で仕込まれたり、市場で売られたりします。
- 材料: 赤ワイン(またはノンアルコールのベリージュース)、砂糖、そしてシナモン、クローブ、カルダモン、ジンジャーなどのスパイスを加えて温めます。
- 楽しみ方: 提供直前に、レーズンや皮を剥いたアーモンドを加えて飲むのが一般的です。体が芯から温まる、クリスマスの象徴的な飲み物です。
- アルコール度数: ウォッカやブランデーを加えて、アルコール度数を上げることもあります。
2. クリスマスビール (Julöl / Julebryg)
- 概要: クリスマスシーズンに合わせて醸造される、特別なビールです。
- 特徴: 伝統的に色が濃く(アンバー〜ダーク)、フルボディで、スパイスや甘みが強いものが多いです。寒い時期にゆっくりと味わうために造られます。
3. クリスマス・ムスト (Julmust)
- 概要: スウェーデンで非常に人気のある、ノンアルコールのソフトドリンクです。「ユール(クリスマス)」と「ムスト(果汁)」を意味します。
- 特徴: ホップや麦芽のエキスが入った独特の風味があり、コーラに似た色と炭酸を持っています。スウェーデンでは、クリスマス時期のムストの売上が、他の清涼飲料水の売上を圧倒するほど国民的な存在です。
🍪 北欧のクリスマスのスイーツ
多くのスイーツは、日持ちするよう焼き菓子(ジンジャーブレッド、クッキー)や、牛乳・お米を使ったデザートが中心です。
1. ペッパルカーコル (Pepparkakor)
- 概要: スウェーデンなどで親しまれる、ジンジャークッキーです。
- 特徴: 薄くてパリッとした食感で、ショウガ、クローブ、シナモンなどのスパイスが効いています。星やハート、ヤギ(ユールボック)などの形に型抜きされます。
- 慣習: クリスマスの飾りとして、紐を通してツリーに飾られることもあります。
2. ルッセカッテル (Lussebullar / Lussekatter)
- 概要: スウェーデンの「ルシア祭(12月13日)」に特に関連付けられる、サフラン風味のパンです。
- 特徴: サフランを使って黄色く色付けられ、独特のS字型や、その両端を巻いた形(猫の形 Lussekatter)に成形されます。レーズンが飾りとして使われます。
- ルシア祭: 12月13日は冬至に近く、光の女神ルシアを祝う大切な日で、このパンは光(サフランの黄色)の象徴とされています。
3. クリスピーナッツ&キャンディ
- トフィ (Knäck): 砂糖、バター、クリームを煮詰めて作る、硬いキャラメルやタフィー。
- マンデルムッサ (Mandelmassa): アーモンドペースト(マジパン)を使ったチョコレート菓子や、焼き菓子のフィリング。
- ジンジャーブレッドハウス: クッキー生地でできた家をアイシングで飾り付けるのも、クリスマスの定番です。
これらの飲み物とスイーツは、北欧の家庭でクリスマスの準備が始まる「アンナの日」の後の長い期間を彩り、人々に楽しみと暖かさを提供してくれます。


